「曇り硝子」

外に雪が積もる。        
音もなく、         
ただ真っ白に       
厚みを増していく。       
ゼロからマイナスへと
冷えていく外気に、
灯油で温度を保たれた
こちら側の空気。       
どんどんと離れるその温度差に、
部屋の窓硝子は曇るばかりだ。
白く曇った窓からは
外の様子は一層見えなくて、
そのうち窓には
幾筋も幾筋も
結露の涙が流れて落ちる。
世界とぼくを
隔てる温度差。

誰かを思う想いも同じ。
こちらがキミを思えば思うほど、
こちらとそちらの温度差は増し、
硝子が曇って、
そちら側が見えなくなっていく。
硝子に雫ができるのは、
温度が高い側と決まっている。
だから、ぼくの窓の内側は
いつも水滴が流れて落ちてて、
いつも、ぼくの胸の内側は
涙の粒が結露していて。
想いが募れば募るほど、
温度が上がれば上がるほど。

既に曇った窓からは
外の様子は見えないけれど、
今も雪が降る。
白く降り積もる。
外気はこれから
更に冷えていく。       
窓の下へと流れる雫は、       
湖となってぼくを沈める。